Project
プロジェクトストーリー / プリンター
失注の局面を乗り越えて大逆転
チームで奪還した“シール状プリンター”の挑戦物語
「ライナーレスプリンター」開発ストーリー
お客様の使用用途に合った製品がなく、他社への切り替えを検討している——。
そんな失注の危機を乗り越えるため、そして長年のお付き合いのあった大手飲食チェーン店の期待に応えるため、プリンターの技術社員たちが課題解決に向けて動き出した。従来の製品よりも大幅に小型化し、飲食店のキッチン棚に設置できるキッチン用プリンター(オーダーシール用プリンター)、通称「ライナーレスプリンター」の開発プロジェクト。通常の半分の期間で製品化を成し遂げ、お客様の要望を叶えたその舞台裏には、技術系社員たちの迅速な決断と技術上の工夫、そしてチームワークがあった。
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Profile :H.Y.機械設計(プリンター)
2015年 中途入社 -
Profile :K.D.機械設計(プリンター)
2019年入社
〈 背 景 〉
失注の危機から始まった、短納期でのリベンジ
プリンター事業部に大口顧客である大手飲食チェーン店から、「既存のキッチンプリンターが大きいため棚に設置できない」という改善依頼が寄せられた。元々納品していたキッチンプリンターは、上から紙が出る構造で設計されていたため、棚内での使用が困難という課題を抱えていたのだ。そうした要望を受け、当初は既存機種の改造による対応を検討したが、開発期間の制限や、競合他社製品の優位性が高いという条件から、プロジェクトが一時中断に追い込まれる。
入れ替え需要があった年間販売数量の多い大型案件だったため、一気にシェアを失う可能性がありました。そんな中でプロジェクトが中断することになり、会社に大きな損害を与えてしまったと申し訳なさを感じていました。
しかし、事態は一変。他製品とシステム連携の兼ね合いから、実績のあるシチズン・システムズの製品を再度検討していただけることに。「緊急対応として100台の先行導入」という条件付きで発注が決まる。こうして通常より半分の開発期間で成し遂げるという高いハードルのもと、新たな小型キッチンプリンター「ライナーレスプリンター」の開発が、H.Y.をリーダーとして本格的にスタートした。
他社製品に切り替わるかもしれない状況から、システム連携の実績があったことで再びチャンスが巡ってきました。長年お付き合いのあるお客様の信頼を取り戻し、強固なものにするため、何としてでもニーズに応える——。そんな想いで前例のない挑戦が始まりました。
緊急での先行導入要請があり、量産までの期間は極めてタイトでした。品質を維持しつつ、いかに早く現場に届けるか。工場の生産技術部門との連携が鍵になりました。
〈 開 発 〉
製品仕様と開発期間の制約に奔走
プロジェクト再開後、開発チームの前に立ちはだかったのは、二つの大きな壁。一つは「極端に短い開発期間」、もう一つは「ライナーレス(糊付き紙)への対応」という技術的制約だった。
開発期間の制限は、製品を評価する時間や不具合に対応する時間、量産展開の時間の短縮に直結しました。さらに、糊付きのライナーレス紙は従来の紙と異なり、糊の影響でプリンターへの負荷が増加し、動作不良を引き起こしました。
H.Y.をはじめとする開発チームは、この難題を乗り越えるため、部品の形状変更や追加をしたり、カッター部分を糊の付着を防ぐ素材にしたりと、既存機種の仕様という制約の中で、試行錯誤を重ねた。
時間の制約がある中でもベストは尽くしましたが、どうしても評価方法はお客様との調整が必要になりました。
また、量産期日までに間に合わせるには、人員ともに足りないという状況に対し、H.Y.はチームの力を結集させた。
手戻りも許されない状況でしたので、他の開発を行っているメンバーの手も借り、プリンター事業部総出で開発・評価を行いました。関係部署や取引先との調整、新規材料の検討、評価の実施、不具合の原因解析など、品質・コスト・スケジュールを管理しながら量産化を実現しました。
度重なる試行錯誤とチームの力を結集した結果、秋には試作機を無事納入することができた。そして試作機の性能が評価され、新しい小型ライナーレスプリンターは全店舗への設置されることになったのだ。
〈 結 果 〉
チームの絆が導いた、信頼回復と満足度向上
完成したライナーレスプリンターは、納入顧客先で高い評価を受け、現場の課題を見事に解決し、お客様にも会社にも大きなメリットをもたらした。
お客様の現場からは「コンパクトサイズで棚に収まる」「操作パネルの位置や機能がわかりやすく操作しやすい」と高評価をいただきました。また、当社の営業部門からは今回の迅速な対応のおかげで市場シェアの防衛、ひいてはお客様との関係維持につながったと感謝されました。お客様の困りごとを解決することで、会社の信頼や優位性維持に貢献できたと感じています。
最も達成感とやりがいを強く感じた瞬間は、短期間かつ未知数の要素を含む新規開発を予定通りに進め、失注の危機を回避できたことです。大手飲食チェーン店のシェアを失う危機を脱することができたのです。これにより、他社の参入を阻止できる可能性が出てきました。また、新たな画期的なコンパクトプリンターとして、商品ラインナップの拡充にも貢献しました。
そして何より、このプロジェクトを通してH.Y.の心に残ったのは、チームの絆だ。
通常の開発期間を外れた特殊な状況にもかかわらず、チームのみんなが協力し合い、無理な要求にも応じてくれました。関係部署の協力と努力により、スケジュールを守りながら開発を完了できたことに大きな喜びを感じました。会社全体がお客様の課題に向き合い、同じゴールを目指して力を結集する——。その一体感と企業としての底力を、強く実感できたプロジェクトとなりました。
〈 今後の展望 〉
品質と納期管理を徹底し、世界シェアNo.1へ
短納期という高難度のミッションを成功裏に終えた今、2人はプロジェクトを振り返り、次なる挑戦への糧を見つめている。限られた時間とリソースの中で製品化を成し遂げた一方で、さらなる品質向上に向けて改善すべき点も明確になった。
短納期対応と新規開発が重なる中で、限られた時間とリソースをどう配分するかは大きな課題でした。その中で得た最大の学びは、どれほど急ぎの状況であっても、スケジュール管理や検証の精度を高めることで、結果的に手戻りを減らし、量産全体の効率や品質向上につなげられるということです。この経験を活かし、今後は納期と品質の両立をさらに高いレベルで実現していきたいと考えています。お客様と品質を大切にする当社の企業文化のもと、信頼を積み重ねていくことの重要性を改めて実感しました。
今回のプロジェクトで得た教訓を活かし、さらなる耐久性の強化や新機能の追加など、製品力の向上に取り組んでいきたいと思います。今後も、当社の強みである製品開発力を活かし、製品を使ってくれた方が喜んでいただけるような革新的な製品を開発し続け、いつか世界シェア1位を獲得したいと考えています。
現場の切実な声に応え、不可能とも思える納期で信頼を取り戻したこの挑戦は、シチズン・システムズの「ひとに向かって進化する」という揺るぎない企業理念を体現した。このプロジェクトで培った技術力、そしてお客様やチームの間に築かれた絆がものづくりの礎となっている。世界のトップシェアを目指し、シチズン・システムズはこれからもひとに寄り添う製品をつくり続ける。